先日ふと気がついた。一番無駄な練習は、楽譜通りに何も考えずに弾くことだと。
「楽譜読むだけで頭使うじゃないすか」
そうじゃない。どうやら譜面をそのままストレートにピアノに落として弾くだけなのが良くないのである。僕がダラダラ数十年遊び弾きしてもまともに通して曲が覚えられなかったのは、まさにこの無駄な練習のせいだったのだ。もっと早く気がついていれば!
もちろん、ピアノを勉強し始めてすぐ「楽譜を見ながら弾ける」のを目標とするのは間違っていない。というか、そこがピアノ独習の入り口とも言える。しかしそこで止まっているのはマズイ。次のステップ、譜面なしで曲を弾けるかどうかが重要なのだ。
「プロの演奏家だって譜面見てますよね。ジャズでもクラシックでも。別に覚えなくてもいいんじゃないすか?」
僕もそう思っていた。ベートーベンの長大なソナタを暗譜で弾くなんて、幼少期からの特殊な訓練の賜物でしょう。人間のやることじゃない。
どうやら違うのである。遅れて独学を始めた人でも、曲は覚えることができる。僕もようやくここ最近クラシックの曲を4、5つ覚えることができた。(ノーミスで引けるわけじゃないけどね)
どうやって覚えるか。まずはメロディ。これは割と覚えるよね。数十年前のアニソンやCMソングなんかも今でも歌えるものがある。次に左手。まずは指に覚え込ませる。ある程度勝手に動くまで練習するわけ。でもこれって危険で「はっ!」と一瞬頭が飛んだら完全ロスト。右も左も分からず、一歩も弾けないことになりかねない。勢いだけで弾いてるとこうなる。
そこで理論仕立てのストーリーが必要になる。最初の小節は5度のトライアド(Cメジャーならソシレ)。すぐにトニックに着地して、16小節で繰り返し。などと記号と数字で流れを覚える。この三本柱(メロディ、ノリと勢い、理論化)を使って曲を覚えることができるのだ。最初はノリと勢いが大事で、徐々にメロディが血肉化し、技術的に慣れてきたら理論で補強する、という感じか。
これってジャズのスタンダードも同じ。Bbメジャーの2514736という洞察があれば枯葉が弾ける。目的を持って練習しないと時間の無駄になる、ということだ。