楽器は子供のうちに習っておいた方がいい。大人になってから習うとなかなか上手くならない、という風潮である。事実、発表会で中学生くらいの子がショパンをすらすら弾いているのを見てしまうと(大人が簡単な曲に四苦八苦しているのを見ると)その事実に圧倒される。「やっぱり子供の方が上達するんだよな。脳が柔らかいんかな。吸収力が違うんかな」と思ってしまう。
しかし、待てよ?
3歳から始めたとして 13歳の中学生は10年のピアノ歴である。5歳から始めたとしても8年。かなりのベテランじゃないか。8年もあれば大抵の仕事に習熟できるでしょう。それに子供の頃から始めた人が全てショパンが弾けるわけでもない。練習が嫌になって続かなくなった子も多い。つまり、中学生のショパン弾きは結局 10年前後、きっちり練習をしてきたわけだ。
大人が10年ピアノを練習してもショパンは弾けない?いやいや、そんなことはない。大人でも10年あればそれなりにイケるのである。幻想即興曲くらい弾けるのでは?テンポ落とせばより確実だ。
だったら大人になってピアノ始めてショパン弾ける人が少ない(多分)のはなぜだろう。子供と違って意思を持って自分で金払って習うんだよね。モチベーションだって高いに違いない。
単純な話で、一つは練習時間だろう。大人になってから毎日一時間きっちり練習するのはかなりの難事業である。掃除洗濯食事。子供時代なら親が全てやってくれた。もちろん仕事がある。早出や残業。夜に家に帰ったら疲れて練習する気も起きない。
それから練習の内容である。好きでもない曲を弾かされる。なんで昔流行ったJ-POP練習せなあかんのか。ギロックって誰だよ。気が進まない。練習に身が入らない。結果はテキメンである。上達しない。大人(おっさん)にブルグミュラーを弾かせる先生がいた。教える気がないらしい。どうせ続かない、工夫して教えるだけ無駄、とすら思ってるかもしれない。
そして発表会。自分の子供みたいな子がショパンを弾いて、自分はモーツァルトの簡単なソナタをたどたどしく弾く。なかなかの精神的試練に違いない。
だったらどうすれば良いか?まず不退転の決意で30分から1時間の練習時間を確保するのである。リモートワークは追い風である。仕事の合間にこっそり練習できる。時短勤務なら出勤前に練習。不要不急の外出を控えて家で練習だ。
発表会で恥をかくのは仕方がない。こればかりは子供の特権だ。4、5才の子がモーツァルトをトチリながら弾いても本人は恥ずかしいなどと思っていない。妙な自意識がついた大人だけが「ハズカシー」「コンナハズデハ」と思う。大丈夫。誰も気にしてない。人前で恥をかくのは楽器上達に避けられない修練だ。
次に練習。モチベーション高く、本質を突いた練習を続けるのがミソである。ここが難しいし、人によっても違うだろうが、また日を改めて書いてみようと思う。