大事なのはモチベーションの維持である。これが難しい。大人から楽器を習い始めても、数年間続けばいいところだ。大抵はちっとも上手くならないことにうんざりして、何かのふとした機会にアッサリ辞めてしまう。
ノルウェイの森だったか、村上春樹が登場人物に「耳がよくないと楽器は上手くならないけれど、耳がいいと自分の演奏にうんざりしてしまう」と言い訳させていた記憶だ。カッコつけたようなカッコ悪い言い訳である。
ちょっと楽器を触ってみて上手くいかないものだから「小さい頃からやらないと上手くならない」とか、あるいは「どうせ自分には楽器を演奏する才能がない」などとできない理由を見つけてしまうのだ。
以前にも書いた。小さい頃にやれば上手くなるのは時間が潤沢にあるからだ。両親が手取り足取り練習を促すからである。大人だってそれなりに時間をかければそれなりに上達する。子供と違って一日3〜9時間を楽器練習に割り当てられない。それだけの話だ。1日1時間、正しい練習を継続すれば上手くなる。当たり前である。
「才能がない」。音楽が好きで楽器をはじめようと思うだけで、最低限の才能があるに決まっている。つまり音とリズムを好む耳がある。あとは練習するのみである。そりゃ大人から始めてオスカー・ピーターソンやキース・ジャレットにはなれないさ。でも数曲〜数十曲記憶して、軽く即興で演奏するくらいは可能だ。
正しく目標を立てることも大事である。5年後にプロデビューだ。オスカー・ピーターソンみたいに弾けるかな。間違った目標設定です。あきらめましょう。小学生からみっちりピアノをやって、ショパンのエチュードを全て弾ける人が音大に入って立てる目標である。5年後に枯葉と酒バラくらい即興っぽく弾けるようになろう。正しい目標である。多分、5年間ちゃんとやれば、他に10曲くらい弾けるんじゃないかな。ジブリだってディズニーだって簡単な曲が弾けるかもしれない。
ただ、楽器と合う合わないは残念ながらあると思う。例えば僕はギターやバイオリンのように左手で押さえて右手で弾くタイプ楽器とは相性が悪い。ギターは中学生くらいから遊び弾きして全く上達しなかった。バイオリンは社会人から7年続けてダメだった。ツボが全然分からないのだ。どうしても他人行儀な感じがした。サックスはそこそこ楽しく吹けるが、やっぱりピアノの相性が良いと感じる。上手くいかないと思ったら、多少楽器を変更してみるのはありだと思う。ただしガッツリ並行して複数の楽器を練習するのは効率的じゃないし(そもそも時間が取れないでしょう)、数ヶ月で諦めるのもよろしくない。楽器との相性は見極めが難しいとは思う。