ジャズを始めた時、何とかして枯葉のコード進行を覚えようとCm7 F7 Bb^7 Eb^7 などと暗記したが、記号は覚えられても弾くときの役には全く立たなかった。英単語や歴史の暗記と曲の暗譜は全く別の作業なのである。おそらく使っている脳の場所が全然違うんじゃないかな。
ジャズを独学し始めて数年後くらいに何となく「あ、曲を覚えるってこういうことなのか」感覚が分かり始めた。この感覚は説明しにくい。言葉にすると簡単すぎて伝わらない気がするところを言葉で説明すると(前にも書いた気がするが)「2514」「7366」で「枯葉」を理解できそうだ、という感覚である。
要するに曲の「抽象化」である。2514という単語で即座に12キーを弾ければ、かなりの曲(少なくともその一部)が弾けるはずである。理論上。
ということで「曲を覚えるってこんな感じだろうな」と薄々分かっても、なかなか覚えられない。そんな期間が続く。
抽象化だけでは曲は覚えられない。2514という4桁の数字は誰だって覚えられるけど、枯葉が弾けるようにはならない。その前提には251というジャズ・スタンダード曲の典型的なルートに向けた進行(あるいは4度進行)や「スケールとダイアトニックコード」に対する洞察が必要である。
中級者の方は「当たり前じゃないか」と思われるかもしれない。初心者のうちは「どう練習したらいいんだよ」と頭を抱えることになる。僕がそうだった。わかってくると簡単な話で、スケールや数字で抽象化したコードを意識しながらゆっくり練習する。それからその曲を空で歌えるようになる。この二つがとても大事なんじゃないか、と思っている。徐々に徐々に、曲が覚えられるようになってきた気がしている。現在進行中なのである。