Googleが作曲AIを作ったとのことだ。
いくつかサンプルを聞いてみたが、4,5年前より随分レベルが上っているように思う。以前はまだ「ネタ枠」だった。時折苦笑を覚えるレベルであった。今は例えば100均ショップのBGMに流れていても全く違和感がない。時折「あれ?」という展開はあるが「趣味の日曜作曲家が作りました」と言われれば納得するだろう。
打ち込みで曲を作っていると、ソフトウェアと作曲行為は親和性が高いと分かる。例えばアルペジエーター。コードを指定するとアルペジオを勝手に演奏してくれる機能である。パラメータを変えるだけで様々なパターンも組める。アルペジオの打ち込みはクリエイティブな行為というよりほとんど作業だから便利で助かる。
それからドラム。Logic Proには一切打ち込まなくても「それっぽく叩いてくれる」機能がある。以下の動画でも使っている。流石にそれだけだと単調だからスネアなどかぶせてはいるけれど。
ベースも同じだ。1度と5度、8度。次の小節のターゲットノートへ半音or全音で遷移するなど。割と機械的に打ち込む作業である。Logic Proのデフォルト機能ではないが、自動でベースラインを組んでくれるサードパーティ製品があるようだ。
ということはコードを指定すればベースとアルペジオが生成され、ついでにドラム演奏も自動的に生成されるわけで、あとはメロディを乗せるだけ。メロディはアベイラブルスケールから選択すればいい。コード進行も1456を組み合わせて使えばよい。技術的にはAIに作曲できてもなんの不思議もない。
では、例えばベートーベンの第九のような大作&傑作がAIに作れるのか?答えはYesである。例えば猫や猿が適当にキーボードを叩いた時、打ち込まれた文字列がシェークスピアのマクベスと全く同一になる可能性は0ではない。AIが無限に曲を生成したときに、そこには当然大傑作が含まれるはずだ。問題は時間である。恐らく、無限の曲を聞いて判断する時間が、人間にはない。
イラストであれば1時間に数千枚?くらいチェックできるかもしれない。しかし、音楽チェックにはそれ以上時間がかかる。一秒では判断できない。ということは、AIに曲を大量に作らせてそれが一つひとつ傑作かどうか判断するより、定評のある人間の作曲家に任せた方がよほど効率的である。
それから演奏の問題がある。人間の演奏の魅力は、リズム、音価(長さ)、強弱のブレなのだ。機械的に打ち込んだピアノの演奏は、ほとんど聴くに耐えない。ちょっとした「タメ」やルバート、強弱あるいはミスとその「取り繕い」さえ音楽の魅力になる。AIに、果たしてこの「ブレ」=「ニュアンス」を生み出せるだろうか?ベースもドラムも同じである。
AIによる作曲は進歩したところで、せいぜいスーパーのBGMや、素人が作る趣味のYoutubeのBGM程度にしかならないというのが僕の予測である。AIが作るパーツを組みわせることで効率的に作曲ができる可能性は高いだろうが、数分以上の統一感のある曲には、やはり人間が一通り手をかける必要があるだろう。