オーディオシステム

いわゆる「オーオタ」という人々がいる。スピーカーに何百万かけるのは当たり前。なんなら自前の電柱を立てる。電力は火力よりも水力の方が安定して良いね。という冗談のような世界である。

僕はオーディオにはあまり金をかけない。そんな金があれば楽器を買う。もちろんいい音で聞くに越したことはないが、そこまで金を掛けようと思わない。

生の音こそが至高である。ピアノなら鍵盤、ハンマー、ペダル、弦、そして楽器全体の響き、全てが合わさってピアノの音となる。あるいはサックス。マウスピースの感覚、強く、弱く運指することで生じるキーや”タンポ”の音。先生が音を出すとなぜか安い楽器でも素晴らしい音が出るのに、素人が出すとどんな良い楽器でもイマイチになる不思議。

素人が楽器と格闘するときにぶつかるリアルな音の世界、プロが出す音を聞いて愕然とする音の世界は、どんなに金をかけたスピーカからも聞こえない。所詮は偽物だ、という感覚。

だから僕は数千円のイヤホンやスピーカーで大きな不満もなく音楽を楽しむことができる。そりゃ僕だっていい音で大音量で聞きたいけど、防音でもないマンションに住んでるんだから無理な話なのだ。生の楽器の代替にはなり得ないだろう、とそもそもオーディオシステムに大して期待してない。

というわけで、僕にはいまいち「オーオタ」が何を求めているのか理解できなかったのだが(生の楽器鳴らせばいいじゃん)、先日ブログだか匿名掲示板を読んで納得できた気がした。曰く「生の演奏よりLP(あるいはCD)の方が音がいいよね」。なるほど、である。

そうか。生のドラム音より、Roland 808の方が好きだ、という感覚か。それは分かるなあ。打ち込みしていると「ここはリアルに寄せたサンプリング音よりRoland 808エミュレートがいいね」となることは珍しくない。

「オーオタ」の皆さんは、金をかけて自分好みの音を作っているわけだ。打ち込みで調整している時の僕と同じことなのか、と。

プロの演奏家だって、昔から「レコードを作り込む」発想はあった。グレングールドしかり、確かカラヤンもそうだったと思う。

ただ、僕はグールドの録音演奏は好きだが(ピアノの圧がすごいぞ)、カラヤンの演奏はストリングが薄く、何だかのっぺりしている。それに演奏に卒がなさ過ぎる。つまらないと思う。おそらくは(いや間違いなく)安物のオーディオシステムで聞く僕の問題であって、カラヤンの問題ではない。

僕の場合は、音自体がどうというより、音の先に生演奏が感じられれば十分満足である。レスター・ヤングやコールマン・ホーキンズの古い録音でも、演奏のリアリティが感じられれば問題ない。高価なオーディオシステムは必要ない。

ついでに、Logic ProなどDTMで出てくる音源も好きだ。最近のサンプリング技術とかシンセの作りこみはすごいね、Rolandやそのクローンのリズムマシーン、楽しいね、とこれも楽しめる。MIDI打ち込むのも微調整するのも楽しい。

安上がりで何よりだ。こだわるとキリがないのが音楽の世界だからね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です