ブラッド・メルドー来日

6/1有楽町国際フォーラム

コンサートがあまり好きじゃない。と思っていた。

わざわざ遠くの会場に出向くのが面倒くさい。3、4時間座りっぱなしは体に良くないに違いない。自由にトイレにも行けやしない。両隣の人にも気を使う。というか隣に臭い人とか咳する人とか、非常識な人が来たら嫌じゃないか。演奏している人にだって気を使ってしまう。アンコールを要求するのが厚かましくて嫌だ。落ち着いて聴けやしない。

実際、大昔に何度か行ったがそこまで感動しなかった(富士通コンコードジャズフェスティバルとか行った気がするなあ)。レコードやCD聴く方が気楽でいいよね。

でもね。一つだけ後悔していることがある。それはキース・ジャレットのコンサートに一度も行かなかったこと。割と頻繁に来日してたらしいんだけどね。学生の頃は財力がなかったし、働き出してからはずっとジャズから遠ざかっていた。今思えば、一度でもいいから行っておけばよかったなあ。

という後悔が後押してくれた。ジャズ仲間から「ブラッド・メルドーが来日するらしいよ」と聞いて躊躇せずチケットを予約したのが数ヶ月前だ。さっきコンサートに行ってきた。

いやあ、よかった。

ブログサムネイルからお分かりの通り3Fの遠い席。演奏者は豆粒のようだ。いや、豆粒は大袈裟。大福餅くらいだ。最初は「やばい。遠いぜ。小さすぎる」と思った。ありがたいことに演奏中は気にならなかったな。実際にブラッドたちが動いているのを見ると、十分に存在感を感じた。

両隣も普通の人で問題なし(まあ、そらそうだわな)。左隣が僕よりふた周り?くらい上の方で高そうな一眼レフを持ってたな。右はOLっぽかった。年齢不詳(よく見なかった)。着席していきなり裸足に靴下を履き始めてビビったけど演奏中は完全無害で問題なし。

演奏はどれもよかった。前から思ってたけど、ブラッドトリオはドラムのジェフ・バラードがいいんだよね。アブストラクトなドラミングでブラッドのピアノとすごく合ってる。ところが、実際に生で聞いてみると意外とフレンドリーというか分かりやすいドラミング。一体、俺はこれまで何を聞いていたんだ?

CDやYoutubeでは存在感の薄いベース、ラリー・グレナディアがよかった。音響セッティング(PAというのか)がよかった。ベースの存在感があった。全く悪目立ちはしない。包容力がある。ブラッドのピアノ、ラリーのドラムというクセの塊みたいな演奏に「ベースいるんか?」なんて思ったこともあったけれど、やっぱりこのコンサバなベースがトリオに必要なんだ、と理解した次第。これは収穫。

何のコードの上に何のスケールを重ねているか分からない例のブラッドフレーズがたっぷり堪能できた幸せ。ブルースもよかった。意外とベタベタなブルースフレーズを繰り出すんだよね。思わず体が揺れて指が太ももを叩きまくった。

アドリブがちょっとつっかえるところが大好きだ。その一瞬に高速で考えてるんだよね。次に出てくる音に味わいがある。

最後のバラードも良かった。なんであんなに綺麗な音が出るのか。そうか。ピアノって綺麗な音が出るんだ!と脳の奥が痺れた。高校生時代の僕だったら涙を流していたかもしれない。

15:00から始まって演奏が終わったのが16:10。例のアンコール攻勢で終了は16:30頃だったかな。これはまあ、アンコール折り込み済みの式次第じゃねーかな。と思った。アンコール演奏、どれもよかったな。

勝手な個々人の印象。ドラムのジェフは愛想が良さそう。客席に手を盛んに振ってたからね。ベースのラリーは真面目そう。もう歩き方や佇まいが真面目。ブラッドはシャイで頭良さそう。

そうそう、隣の靴下お姉さんは演奏が終わった後で逃げるように退場していた(なので顔も年齢も不明)。世の中いろんな人がいる。

疲れが取れた気分になれた。ジャズピアノのモチベーションも上がったし、生活も一次元上に押し上げられたような気分だ。

面倒くさいなと思っても、少なくとも年に一度は「良い」コンサートに行くべきだね。うん。いや数回行っとく?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です