タッチの問題

幼少期からしっかりピアノをやってきた人(おそらくは音大出)がジャムセッションに参加すると一発で分かる。

とにかくタッチが正確。そして強力だ。ぶれない。ミスタッチする気配すらない。

すげーなと思う。左手も右手も揺るぎない。僕は死ぬまで練習しても到底その域には到達できないだろうなあ、と思う。

そう思って絶望するかといえば、そうでもないんだな。これが。

嫉妬や。嫉妬やない。

嫉妬じゃないのである。マジで。

申し訳ないけど、そういうかっちりしたピアノでジャズを聴いても、僕には全くピンとこないのだ。

だから、そんな風に弾きたいとは思えないのである。

例外が一人だけいる。

ビル・エヴァンスだ。

極めて正確なリズムとタッチ。楽譜に綺麗に落とせるんだからすごい。ジャズが楽譜に落とせたらオカシイんだよ。それでいてちゃんと即興っぽく聴こえる。つまり仕込み臭くない。その上に歌心もあって聴かせるんだから恐れ入る他はない。ガチのマジの天才である。

例の映画を見たけど「ビルはミスタッチしたことがない」とか「ずっと練習してた」といったシーンがあった気がする。ちょっとただものじゃなかったんだね。オカシイって意味で。(もちろん褒めてる)

“ヨレ”ってる名ピアニストは大勢いる。というか名ジャズピアニストにはタッチとリズムが正確な方が珍しい。ノリノリのピアノだって、メトロノームに正確なのではなくリズムが速くなってる方が多いはずだ。はっきり言って、正確さなどどうでもいいのだ。

この人を出しておけばいい。ハービー・ハンコック。11歳でモーツァルトのコンチェルトを弾いた。技術的には文句のつけようがないはずだ。でも演奏はユルい。”ゆらゆら”である。

でも、そこがいい。気持ち良くて眠ってしまうくらいだ。本人も、タッチとリズムの正確さに全くこだわっていない、ということ。

だから僕も安心してヨレヨレと練習しているのだ。クラシックと違って、ジャズには下手うまってあるんだよ。絶対に。

クラシックは別だ。

やっぱりかっちりしてないと気持ちが悪いね。こればっかりは。

かっちり演奏した上で個性をちゃんと出す名人芸。それがクラシックの味わい。落語みたいなもんかな。(適当

まあ、人間業じゃないよね。はは。

やっぱり年取ってやるなら、ジャズ。間違いない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です