楽器を練習するなら(残念ながら)どうしても体育会系のノリが必要である。「今でしょ!」「毎日練習!」とかそういうやつ。スポーツだったらうさぎ飛びは膝を無駄に痛める。水を飲まないのはむしろ危険。など科学的・経験的な定説がある。しかし楽器の練習には科学的にどうすべしという理論がないから困る。ひたすら気合い入れてやるしかない。クラシックピアノの界隈では練習しすぎて片手が麻痺する(しかも治療法が分かっていない!)病気があるらしい。恐ろしい話である。同時に、なんでそこまで練習するか?とも思う。1日に5時間練習するのと12時間練習するのとで、どこまで差が出るのだ?指を麻痺させるリスクを犯して12時間練習する価値があるのか?と。まあ、大人からピアノを始めた人間には関係のない話だけど。
僕の感覚では、効率的な練習とそうでない練習がある。例えば何も考えずにダラダラ練習するより、音楽理論を確認しながら、曲をアナライズしながら弾く方が曲を覚えるには良い。それから指の練習にしてもフリーテンポで遊び弾きするより、メトロノームにきっちり合わせる練習が良い。なかなかそうもいかないんだけどね。ついでにハノンは大人がやるには時間の無駄な気がするが(僕は弾かない)暇で暇でどうしようもない時に薬指を鍛えるためにハノンを叩くのは無駄じゃないのかもしれない。一概には言えないということか。
どうせ練習するなら濃密な練習が良いのは当たり前で、そのためにはマインドセットが大事である。「全然上手くならねーな」と思うより「少しずつ上手くなってるな」と感じる方がよい。ただ、実際のところ、1週間程度じゃ「全然上手くならねー」のが現実だから厳しい。大人から楽器を始めても続かないのはそこが主な原因である。
ピアノが上達するのには相当な時間がかかる。目が覚めたら指がオスカー・ピーターソンになっていたでござる。んなわきゃない。一つのフレーズが弾けるようになるまで(あるいは左手がスムースにバッキングできるようになるまで)数週間〜数ヶ月かかる(だから僕はアドリブのために事前にフレーズ仕込むのをお勧めしない。楽器初心者にはできねーからである。)。3ヶ月かけて一曲も満足に仕上がらない。絶望である。あとどれだけ練習すれば上手くなれるのか。最低でも5年は必要である。少し自己満足できるようになるまでは10年。とにかく続けるしかない(オッスオッス)。上手くなるスピードは指数関数的だからそこはありがたい。中級者になればレパートリーがどんと増える。しかも暗譜もできるようになる。ストックフレーズもできるかもしれない。そうなるまで、あと5年?10年?なんだあっという間じゃないか。というマインドセット。