メロディ、バッキング、アドリブサンプルが掲載された楽譜や、あるいは名演の耳コピ楽譜から、ジャズが学べるだろうか。結論から言えばYESである。ただし注意が必要だ。
恐らくもっとも良い学習法は、楽譜なぞ使わず、好きなアーティストの好きな曲を自分で耳コピすることであろう。スケールやコードを聞き分け、耳から曲を覚えるのだ。でもまあ、難しいよね。時間もかかる。音を取るのも難しい。だったら、誰かが耳コピして楽譜に落としたものを買って練習する方が早いじゃないか。
そう思って楽譜を買うわけだが、楽譜を見て曲が「聴こえる」人は当ブログが想定する読者ではなく(それはもうプロの演奏家、作曲家だ)「えーとこれがドで次がフラットのミで・・・」と一つ一つ音を読み取り、弾いてみて初めて音が分かる人がほとんどのはず。
つまり我々のレベルでは楽譜をそのまま鍵盤などに反映するだけでかなりの時間と体力が掛かってしまう。ピーターソンやビルエバンスは言わずもがな、ウィントンケリーやモンクだって結構難しい。自分の演奏を聴くどころではない。完全に曲を覚えて見ずに弾けるようなればようやく「聴いて覚える」入り口である。そこまでが大変だ。そうなる前に飽きてしまうとこれまでの練習が無駄で単なる指の訓練に終わった、となる(次はもっと簡単な楽譜を選びましょう)。しかも暗譜はあくまで入り口。前提に過ぎない。曲を理解しないまま惰性で指が動いている箇所が多い。そこからが大事である。
一方、耳コピは曲を理解してないと難しい。「ここはC7のはずだから、このテンションの効いたバッキングはミ♭シ♭ミか?」なんてズバリと左手のバッキングを耳コピできた時の感動はひとしおである(なかなかできないんだけどさ)。楽譜だと何も考えずに「ミ♭シ♭ミ」を弾くだけだ。「ミ♭シ♭ミ」が腹落ちするのはまだまだ先である。
結局、耳コピよりも対して近道にはならないし、理解せずにうっかり弾き飛ばすと全く意味がない。楽譜からジャズを勉強するなら、自分でリハーモナイズするとか、アドリブを自分なりに発展させるとか、転調してみるとか、プラスアルファが必要だ。それでも耳コピにはあまりにも時間と労力がかかるから、楽譜から学習するジャズもありなのは間違いないと思う。