有名ミュージシャンの誰それが実は楽譜が読めないというのはよくある話である。ジャズではエロール・ガーナーが有名だが、デビュー当時は楽譜が読めなかったジャズミュージシャンはもっと多いのではないかと思う。
こういうミュージシャンに対して「楽譜が読めないのにスゴイ」などと思ってしまうかもしれないが、実際にはそうではなくて「楽器の演奏や作曲を学ぶのに楽譜の読み書きは必須ではない」と理解するのが正しい。下手をすれば「楽譜に頼らない方が上達が速い」まで言えてしまう。
楽譜が読めないということは、目と耳で覚えるということである。この耳で覚えるというのが重要だ。楽譜が読めなければ集中して聴かざるを得ない。誰かが採譜したやつを買えばいいか、とか、入門書買って練習曲やっとけ、という発想にならない。熱心に聴いて記憶して自分の楽器で再現する。これが結局ベストの練習である。楽譜に頼ってしまうと聴くことが疎かになってしまう。
残念ながらピアノだとそういうわけにもいかない。ピアノの演奏を耳でコピーするのは管楽器やベース、ギターよりも大変である。何せ3つ以上音が重なることがほとんどだ。音域もオーケストラ全楽器とほぼ同じという広さだ。聴き分けるのも大変である。というか聴き分けられないコードの方が多い。音の数も多い。楽譜に頼らざるを得ないのである。(だからエロール・ガーナーが有名なのかもしれない)
楽譜を見ながらだと曲を血肉化しなくてもとりあえずは一通り弾けてしまうのも問題だ。曲への洞察を欠いたまま、上っつらで弾けてしまうので、勉強にならないのだ。楽譜でジャズを勉強するのだったら、かなり気をつける必要がある。