下手ピアノ・ラジオ#1

- 視聴者の皆さんこんにちは。記念すべき下手ピアノラジオ第一回。ゲストはウィントン・ケリーさんです。

はい。ウィントン・ケリーです。よろしくお願いします。本日はお招き頂きありがとうございます。

- いえいえ、こちらこそお休みのところご出演頂きありがとうございます。ケリーさんがこの世を去ってからほぼ50年が経ちました。

そんなになりますか。あっという間だねえ。

ー あまりフリートークしてるとボロが出そうなので早速本題に入りましょうか。まずはこちら。アルバム Kelly Blueの天下の名演、Softly, As In A Morning Sunriseをどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=ldTIXsCXJhc

懐かしいね。思い出すなあ。でもこれ、もう60年以上前の演奏じゃないか。メンバーはえーと・・・

ー ポール・チェンバースとジミー・コブですね。

そうだったね。今でも聴いてる人がいるのかい?

- 今でも大人気ですよ。

本当に?信じられないね。

- 大人気は大袈裟でした。かなりニッチな人気です。

なんだそりゃ。

- 実はケリーさんにはかなりニッチでコアなファンがついてましてね。どういう人たちかというとジャズピアノをシリアスに習ってる方でケリーさんの大ファンだ、という人は意外と多い。

意外ってのは失礼じゃないか。でも嬉しいねえ。僕のジャズが今でも好まれるとはね。ビル・エバンスあたりの人気も凄そうだけどね。

- ビル・エバンスのファンはどちらかというとワナビーな印象ですね。イメージ先行というか。ジャズ・ガチ勢にとってはビルは研究対象であってアイドルではないかな。

君も言うねえ。でも分かる気がするなあ。とにかくやつ(ビル・エバンス)は理論オタクの練習オタクだったよ。確かに凄いとは思ったし正直影響も受けたが、ちょっと僕とは違うよね。

- スタイルも目指してるものも・・・

全然違う。

ー シリアスなジャズファンがいる理由をご自身はどうお考えですか?

そうだな・・・

やっぱりハートじゃないかな。マイルズがよく言ってた。「テクニックじゃねえ。大事なのはハートだ」ってね。全く同感だよ。

ー テクニックは重視してないですよね。

僕の演奏を聴けば分かるだろう?速弾きには全く興味がない。あんなの意味ないよ。

- そこまで言い切りますか。

短い速弾きはアクセントになるし、僕も使う。でも長い速弾きパッセージがソロに出てきたらなんかしらけない?僕はダメだね。練習してきたんだな、仕込みだな、スケール弾いてるだけだな、って思う。どうせ苦し紛れにスケール弾くんだったら速弾きするよりスウィングさせた方が絶対にカッコいい。

- オスカー・ピーターソンはなっとらん、と。

勘弁してよ。彼は別格だよ。スイングもしてるし。彼のスタイルを僕がどうのこうの言う資格はないよね。

- オスカーも今でも根強い人気があります。さて、スケールの話が出ましたが、Softlyにもペンタ下ってるだけとか上ってるだけの箇所がありますね。

経過音くらいで難しいテンションも使ってないだろう。ペンタ中心でb3, b5thを上手く使えば十分さ。

- 確かにこの演奏もCのマイナーペンタとb5th、ほぼ通しですね。

だろ?

ー なんならミスタッチも割とありますよね。

あはは。あれはスイングしてるからミスじゃないんだよ。ってのは冗談として、ガチンコでアドリブやってるんだからたまにはミスはあるさ。

- そうなんですよね。ケリーさんの演奏には「ガチンコ・アドリブ感」があるんですよ。訥々としたレイドバック気味演奏なのに、歌心とスイングとアドリブのスリリングさもある。テクニックじゃねーんだと。下手でも大丈夫だと。

そこまで言ってないけど(苦笑

- もう60年代入ると技巧的なピアニストばっかりで。

小さい頃からクラシックバリバリ弾いてた、みたいなのがいっぱい出てきたね。

- どれ聴いても似たり寄ったりじゃないですか。

言いたいことは分かるよ。定型フレーズ仕込んで流暢に披露して「これがおしゃれでカッコいいジャズピアノでございます」ってね。僕のスタイルじゃない。

- ジャストリズムだけどスイングしてなかったり歌心のないアドリブの多いことと言ったら!

そんなジャズピアニストばかりでもないだろう(苦笑

- すみません、言い過ぎました。

なかなか面白かったよ。

- それではそろそろお時間のようです。最後に一言。

お招きありがとうございました。ここに出てきた僕は2021年のサイト管理人の妄想に過ぎないわけだけど、それでも僕が天国に行って50年後、未だに日本に熱心なリスナーがいると分かって嬉しかったよ。またぜひ呼んでください。ありがとうございました。

ー 本日のゲスト、ウィントン・ケリーさんでした。ありがとうございました。

Wikipediaより

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