みんなウソが好き

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相変わらずピアノは練習している。モチベーションは低調で腕立て伏せをしている気分だ。左手の訓練のためにショパンの「革命」をゆっくり弾いている。ますますストイックな筋トレの気分である。

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大人になってからピアノを始めたとして、ゆっくりなら難曲でも弾ける。さあ「革命」を弾いてみよう。筋力が足りないと気がつくだろう。途中で薬指と小指を動かす筋肉が疲労して動かなくなる。鍛えるしかない。毎日筋トレである。それにしてもショパンは美しい。よく出来た傑作少女漫画みたいだ。

さてさて、本題。本日はピアノとは全く関係がない。重めの話題である。

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「毎日かあさん」の西原理恵子氏の娘と思しき女性が、SNSで親から虐待を受けてきたと書いた件である。リンクは貼らない。「日常的に言葉の暴力を受けてきた」「『ブサイクだから』といわれ12歳で整形させられた」「誕生日を無視された」「兄と比べてずっと軽んじられてきた」などの内容である。子育てについてキレイゴトを言うつもりはない。子育てはバラ色の生活ではない。そんな僕でも「これはやべえな」と思われた。虐待を裏付けるような元西原氏の友人であろう方のTweetもあった。

男兄弟と比べて親から軽んじられ育てられた女性は、あのおもしろおかしい「毎日かあさん」を読んでほのかに西原氏の娘差別と毒親ぶりを感じるらしい。僕には全然分からなかった。男は鈍いのである。

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一般論で言えば「作家と作品は別物」である。立派な作品を作る人が立派な人格者とは限らない。むしろ逆であろう。古今東西に目を向けると芸術家の私生活が破綻した例が、いくつも思い浮かぶ。芸術家が安定した人格者だったり平和で穏やかな家族生活を営む方が珍しいはずだ。

特にサイバラ氏のように自らと周囲の人間をネタにしてギャグ漫画エッセイを書くとなれば、当然、周囲の人と強烈な軋轢を生むはずである。

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「毎日かあさん」は、嘘であった。

そういえば僕が愛読する村上春樹も、どこかのエッセイで「嘘ばかり書いている」「本当のことを書けばちょっとした騒ぎになるだろう」などと書いていた。そりゃ羊男だとか井戸ワープだとか嘘もいいところだし、カッコつけて書いてるんだろうし、嘘ばかりだわな。と思っていたが、彼が言っているのは、もっと深いレベルの嘘なのかもしれない。

人は嘘が大好きだ。嘘の世界に生きる方が楽しいのだ。

人を動かすのはいつだって嘘であり、嘘つきである。嘘を提示するのは小説家や漫画家だけではない。政治家や宗教家の大事な仕事である。なんだか剣呑な話になってきたな。

「嘘も方便」とはお釈迦様の言葉である。嘘が悪なのではない。嘘は諸刃の剣である。嘘は人を殺すことも活かすこともある。人は事実に即して生きることはできない。嘘の世界から出て生きることは、あまりにも難しい。

嘘には人生がかかっている。同じことだが、ある種の人は人生をかけて嘘をつく。フェイクニュースが氾濫する今、質の悪い嘘に影響される可能性が高まっている。気をつけて生きる必要がありそうだ。

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