
ジャズで使われる楽譜はリードシートと呼ばれるもので、コードとテーマのみが書いてある。日本のジャムセッションで使われるデファクトが「黒本」である。ジャズピアノを弾く時はこれを見ながら左で伴奏し、右でメロディを弾くことになる。
初心者の左はベタっとコードを弾くよね。C^7ならドミソシ。ソシドミあたりかな。その上で一生懸命テーマを弾く。当然である。どうせ弾くなら全部弾いとけ。コードトーンの勉強にもなる。大事なことだ。
でもYoutubeでプロの演奏を見ると「どうしてこんな伴奏ができるのか」と思う。一体、どんな練習したらコード見ただけでいろんなバリエーションのバッキングが出来るのか。
思うに、こういうことではないのか。
C^7を見て何を弾くか。ドミソシ全部。あるいは1−3、1−5、1−7の2音だけ。1−3−7などの3音パターン。次にルートレス。3−5−7−9とか7−9−3−5とか。6−1−2−3−5というパターンもあるでよ。それからウォーキングベース。ドミソを一気に弾くんじゃなくてアルペジオで弾く。スケールで上がる。下がる。5度上がる。下がる。無数のパターンを体で覚えて、コード記号を見たときに瞬時に出るようにする。こうすればプロみたいに弾けるのではないか。
残念。無理だ。弾けない。そりゃいつかは弾けるようになるかもしれないけれど数年程度じゃ無理。この方針で練習するのは時間の無駄だ。左手を特定のフォーマットに馴染ませる反復練習も確かに大事だけど、それだけではリードシートをカッコよく弾けない。
何が違うかというと、プロはむしろ音をバラバラに把握しているように僕には見える。コードをブラックボックス的な塊として見ていない。もちろんあえてクラスタでグシャッと出すこともあるけどね。一定の流れと曲の雰囲気を把握すると同時に(例えば3625でライトなスイング)、左フォーマット1−7、1−3、ウォーキングベース、右によるコードトーンの補完とリズムを、ほぼ何も考えずに(!)弾けるのだろう。
コードに対応する左手フォーマットが、レゴブロックみたいな素材としてあって、それらを組み合わせればカッコいいバッキングが出来る。そんなんじゃないのだ。
じゃあ、どうしたらいいのか。左と右でコードトーンをいつでも出せるようにすればいいんじゃないか、と思い始めている。左手を特定のフォーマットに閉じ込める練習だけではだめなのだ。(その練習も無駄ではないんだけどね)